2009年05月05日

tabi0133 永井均「マンガは哲学する」

私がマンガに求めるもの、それはある種の狂気である。現実を支配している約束事をまったく無視しているのに、内部にリアリティーと整合性を保ち、それゆえこの現実を包み込んで、むしろその狂気こそがほんとうの現実ではないかと思わせる力があるような大狂気。そういう大狂気がなくては、私は生きていけない。その狂気がそのままその作者の現実なのだと感じたとき、私は魂の交流を感じる。それゆえ、私がマンガに求めているものは、哲学なのである。P4-5
永井均「マンガは哲学する」(講談社 2004)


マンガでしか表現できない哲学があるという直観にもどづく1冊。私は、「マンガという表現形式」と「マンガというジャンルが人の情報対峙における与える影響」に関心があったので楽しむことができた。

マンガは、実際には発音が伴わなければならないせりふが文字で書かれるという約束事で成り立っている。マンガを読んでいる物は、それを意識していないからこそマンガを自然に読むことができる。

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文字がつくられ、その文字の発音が与えられているにもかかわらず、私たちの頭の中には なんの発音も発生しない。

後者の視点として、このようなコンセプトが堂々と流通することへの愉快さをおぼえる。本書でも登場する『気楽に殺ろうよ』は、性欲よりも食欲が隠されるべきもので、殺人の権利が売買されるのがあたりまえであるような、別の世界に入り込んでしまった男の話である。

そこでの話しを引用すると『食欲とはなにか?!個体を維持するためのものである!個人的、閉鎖的、独善的欲望といえますな。性欲とは?!種族の存続を目的とする欲望である!公共的、社会的、発展的、性格を有しておるわけです。と、こう考えれば、地球社会のありかたもあやしむに足りませんな!』永井さんはこの立場を、「彼の態度を見ていると、いかなる相対化の理屈も、実はそういう絶対性の上にのっかってしか機能しないことがよくわかるのである」と述べている。相対主義の泥沼、その果ての神秘化、それらの往還といった思考形態を深める意味で「相対主義の極北」を本棚からとりだしてみる。

■参考リンク
格安哲学
走りながらOSを変える
吉田戦車



■tabi後記
以前、銭ゲバの書評をしたことがあるが、私の中では新鮮な書評体験であった。(ドラマが放映されていた時ほどではないが、この記事には常時アクセスがある)マンガ/絵本/俳句/絵画/音楽といった芸術表現にとらわれずにtabiをしてみようかと考えている。

『マンガは哲学する』永井均(講談社)が扱っている作品一覧

■第1章 意味と無意味
藤子・F・不二雄「ミノタウロスの血」小学館文庫『異色短編集1』
藤子・F・不二雄「気楽に殺ろうよ」「サンプルAとB」小学館文庫『異色短編集2』
藤子・F・不二雄「絶滅の島」「流血鬼」コロコロ文庫『少年SF短編集2』
手塚治虫「ブラック・ジャック」講談社
吉田戦車「伝染るんです。」小学館
中川いさみ「クマのプー太郎」小学館
諸星大二郎「感情のある風景」集英社『夢みる機械』
城アラキ・甲斐谷忍「ソムリエ」集英社
福本伸行「カイジ」講談社

■第2章 私とは誰か?
萩尾望都「半神」小学館文庫 
萩尾望都「A-A´」小学館文庫 
吉野朔実「ECCENTRICS」集英社
士郎正宗「攻殻機動隊」講談社
高橋葉介「壜の中」朝日ソノラマ『怪談』
川口まどか「ツイン・マン」秋田書店
田島昭宇・大塚英志「多重人格探偵サイコ」角川書店

■第3章 夢−世界の真相
高橋葉介「夢」朝日ソノラマ『怪談』
佐々木淳子「赤い壁」「メッセージ」「Who!」フロム出版『Who!』
諸星大二郎「夢みる機械」集英社『夢みる機械』
楳図かずお「洗礼」小学館文庫

■第4章 時間の謎
藤子・F・不二雄「ドラえもん」小学館
手塚治虫「火の鳥−異形編」講談社
星野之宣「ブルーホール」講談社
佐々木淳子「リディアの住む時に」フロム出版『Who!』
藤子・F・不二雄「自分会議」小学館文庫『異色短編集1』

■第5章 子どもV・S死−終わることの意味
楳図かずお「漂流教室」小学館
楳図かずお「わたしは真悟」小学館
諸星大二郎「子供の遊び」集英社『不安の立像』
松本大洋「鉄コン筋クリート」小学館
吉野朔実「ぼくだけが知っている」集英社
永井豪「霧の扉」中公文庫コミックス『永井豪怪奇短編集2』
しりあがり寿「真夜中の弥次さん喜多さん」マガジンハウス

■第6章 人生の意味について
西原理恵子「はにゅうの夢」双葉社『はれた日は学校をやすんで』
業田良家「自虐の詩」竹書房文庫
しりあがり寿「髭のOL藪内笹子」竹書房
坂口尚「あっかんべェ一休」講談社漫画文庫
つげ義春「無能の人」新潮文庫『無能の人・日の戯れ』
ゆうきまさみ「究極超人あ〜る」小学館
赤塚不二夫「天才バカボン」竹書房文庫

■第7章 われわれは何のために存在しているのか
星野之宣「2001夜物語」双葉社
星野之宣「スターダストメモリーズ」スコラ
石ノ森章太郎「リュウの道」竹書房文庫
永井豪「デビルマン」講談社
岩明均「寄生獣」講談社
posted by アントレ at 21:00| Comment(0) | tabi☆☆☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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