2009年08月23日

tabi0252 岩井寛「森田療法」

生の欲望こそ自由
「あるがまま」とは、事実をそのままの姿で認めるということである。たとえば、苦手な上司と面接をしなければならないときに、会って自分の構想をよりよく披瀝しようと考える一方で、あの上司は苦手だからなんとかその場を繕って逃げてしまいたいという考えも浮かぶ。これは両者ともに、その現実と直面している人間の欲望なのであって、一方では、苦しくても自己実現をしたいという欲望と、他方で、苦しいから逃避をしたいという欲望と、両者ともにその人に付随する人間性なのである。P13
岩井寛「森田療法」(講談社 1986)

神経質(症)者は、理想が高く、"完全欲へのあらわれ"が強いために、常に"かくあるべし"という理想的志向性と"かくある"という現実志向性が衝突してしまう。そして、その志向性が乖離するほど、不安、葛藤が強くなってしまうのだ。

森田療法はこのような状態に対して、心の不安を「異物」として除去しようとせず、そこに日常とのおおらかな連続性を容認するところを基礎とする。よく知られるフロイディズムとは、依って立つところが大きく異なる。

岩井氏の考え方は、森田療法にすべてに一致しているわけではないが、「あるがまま」の気持ちこそが不安の異常な増幅を解消しうるとする。"かくするしかない"という低きにつことする欲望を"そのまま"にして、もう一方の"かくありたい"という自己実現の欲望を止揚していこうとする欲望の方向性を考えるのである。

■参考リンク
Report 本に溺れて浮いてみる



■tabi後記
本書は、岩田氏が死の間際にいながら口述で完成したもの。終末に出てくる「生きることの自由とは、意味の実現に賭けることなんです。」という言葉の重さを感じる。

周りからは「無理をしないで辞めたほうがいい」という心配の声、「そこまでして名誉がほしいか」という非難の声があったようだ。しかし、どの言葉も岩田氏にとって「あるがまま」ではなかったのだろう。
posted by アントレ at 20:44| Comment(0) | tabi☆☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。