2009年08月30日

tabi0273 加藤秀治郎「日本の選挙」

投票はどこから来たのか、投票は何か、投票はどこへ行くのか
選挙制度の議論のパターンをみると、教育問題とよく似ているところがある。まず、誰でも口が出せるし、それを直接の専門とする学者の意見があまり尊重されないことである。また、思い込みの強い議論が多く、意見のことなる人の間では有益な討論がなされないのも似ている。
(中略)
さらには、思想的バックボーンに無頓着な議論が多いことも似ている。多様な教育制度にはそれぞれ理念があるのだろうが、あまりそんな話は聞かない。選挙制度でも平気で思いつきのような改革案が出されてくる。P4(はじめに)
加藤秀治郎「日本の選挙」(中央公論新社 2003)


小選挙区制は安定した政権(二大政党)がつくれるが死票が多い、比例代表制は選挙民の意見を正確に反映しかつ死票がないが小党分立で政権が安定しない・・etc。選挙制度の報道は同じことを繰り返している。

このようなメッセージの裏には何があるのか?そもそも選挙制度とは何か?そして選挙制度はどうなるのか?本書は選挙制度の話は、上記の報道だけでは片付けられないことを教えてくれる。

もともと小選挙区制と比例代表制は根底にある理念が異なっている。選挙制度を論じるには、まず依って立つ政治理念を明確にしなくてはならない。オルテガ・イ・ガセトは「大衆の反逆」にて「民主政治は、その形式や発達の程度とは無関係に、一つのとるに足りない技術的な細目に、その健全さを左右される。その細目とは選挙の手続である。それ以外のことは二次的である。もし選挙制度が適切で、現実に合致していれば、何もかもうまくいく。もしそうでなければ、他のことが理想的に運んでも、何もかもダメになる」と語っている。

90年代の政治エネルギーの大半を選挙制度改革費やしたかに思えるが、井堀利宏氏の「世代間選挙区」のような発想が根源的に議論されたのだろうか。そして、その議論は我々に届いているのだろうか。

以前から、一票の格差に関する話題はことかかない。住居地域における1票格差の議論は徐々に顕在化してきている。また、シルバーデモクラシーといわれる世代間1票格差も注目を浴びている。一方で、誰も当選させたくないけれど「あの人だけは当選させたくない」という意思表示をするための負の投票権(マイナス投票)という考え方も上がってきている。

このように多様な側面がある「選挙制度」について考える日が、人生に1度くらいあっても良いだろう。投票はどこから来たのか、投票は何か、そして、投票はどこへ行くのだろうか。

■参考リンク
選挙の前に読んでおきたい本&目を通しておきたいWebサイト



■tabi後記
ブライアン・カプラン「選挙の経済学」では、大多数の有権者は、市場メカニズムを過小評価し、貿易の利益を過小評価し、労働の価値を過大評価し、経済をあまりに悲観的に見通す傾向がある。こうしたバイアスが存在するために、私たちはわざわざ間違った政策を選び、民主主義を台無しにしていると論じている。

近年は、政党や個人といった縛りではなく「政策」をベースにして投票を行なおうという声が上がっているが、どのマニフェストも判を押したように同じ構図になっている。「両政党の違いよりも、政党内部の違いの方が大きい」という指摘は、1つの迷言として考えておきたい。
posted by アントレ at 14:48| Comment(0) | tabi☆☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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